郵便ポストから郵便物を回収する業務の入札を巡り、特定の業者が受注できるよう便宜を図った見返りに賄賂を受け取ったとして、警視庁は2026年5月20日、日本郵便東京支社の元社員を日本郵便株式会社法違反(加重収賄)の疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは、東京都足立区に住む日本郵便の元主任、米田伸之容疑者(37)です。米田容疑者は社内調査を経て、2026年4月に懲戒解雇されています。また、米田容疑者に便宜を依頼して見返りを提供したとして、東京都板橋区の運送会社「ハルキエクスプレス」の代表取締役、西村光一容疑者(56)=東京都北区=と、同社の経理業務を請け負っていた会社役員、橋本英孝容疑者(64)=堺市東区=の2人も同法違反(贈賄)の疑いで逮捕されました。
捜査関係者によると、米田容疑者は集配業務に関わる主任だった2024年10月頃、東京都内4つの郵便局における「取集(しゅしゅう)業務」の入札を巡り、ハルキエクスプレス側に受注させる見返りとして現金10万円などを受領しました。さらに2025年5月頃には、謝礼として計約110万円分の東京ディズニーリゾートのホテルやツアー代金を同社側に負担させた疑いが持たれています。
当時の入札制度では、参加業者の提示額が日本郵便側の設定した予定価格を上回ると落札が不成立となり、その後は予定価格に最も近い業者と個別に金額を決めて直接契約(随意契約)できる仕組みになっていました。米田容疑者はこの制度を悪用し、入札前に各社から提出させた原価額を極端に下回る予定価格をあらかじめ設定して入札を不成立に誘導し、ハルキエクスプレス社が確実に随意契約へ移行できるよう調整していたとみられています。その後、実際の契約額は予定価格の2倍以上にあたる年間約1億8000万円まで増額されていました。
警視庁は、米田容疑者が非公表の情報を漏らすなどして特定の運送会社の利益を意図的に膨らませていたとみて、詳しい経緯を調べています。
みなし公務員とされる根拠について
日本郵便は民営化された株式会社ですが、郵便という公共性の高い事業を担っており、「日本郵便株式会社法」という特別な法律によって組織や業務が規定されています。
また、日本郵便株式会社法の規定により、日本郵便の取締役や職員は、刑法をはじめとする罰則の適用においては「公務に従事する職員(みなし公務員)」とみなされることが定められています。このように、職務の公共性から民間人でありながらも刑法上は公務員と同様に扱われるのが大きな特徴です。
この規定があるため、民間企業の社員であっても職務に関する賄賂の授受は「収賄罪」の対象となります。さらに今回は、単に現金などの利益を受け取っただけでなく、「職務上の権限を悪用して不適切な契約を結ぶなど、実際に不正な便宜を図った(職務に背く行為をした)」疑いがあるため、通常の収賄罪よりもさらに罰則の重い「加重収賄罪」が適用されることになります。
日本郵便の元社員が贈収賄の疑いで再逮捕
郵便物の収集業務に関わる贈収賄事件で、日本郵便の元社員が、別の業者に対しても便宜を図った見返りとして賄賂を受け取っていた疑いで再逮捕されました。
収賄の疑いが持たれているのは、東京都にある日本郵便東京支社の元社員、米田伸之容疑者(37)です。米田容疑者は2025年4月、郵便物の収集業務を上北哲也容疑者が社長を務める運送会社に委託するよう便宜を図り、その見返りとして約120万円相当の高級腕時計を受け取ったとされています。
米田容疑者はこの運送会社側から、腕時計のほかにもリュックサックや靴なども受け取っていたということです。
警視庁は、物品による賄賂の受け渡しが常態化していた可能性があるとみて調査を進めています。
日本郵便の入札汚職事件で元社員の米田伸之被告が起訴内容認める 懲役3年求刑
東京都に本社を置く日本郵便株式会社の入札をめぐる汚職事件で、同社法違反(収賄)の罪に問われた元社員の米田伸之被告(37)は11日、東京都の東京地裁立川支部で開かれた初公判で起訴内容を認めました。検察側は懲役3年、追徴金約120万円を求刑し、弁護側は執行猶予付きの判決を求め、審理は即日結審しました。判決は10月7日に言い渡される予定です。
検察側は論告などで、郵便物の収集業務における入札で便宜を図った見返りとして、接待を受けていたと指摘しました。同社の前任者からの引き継ぎによって2020年ごろから飲食などの接待が始まっていたとし、入札の公正や公平を害したと述べました。
起訴状によりますと、米田被告は2024〜25年、運送会社に千葉県の東京ディズニーリゾートの宿泊費用を負担させるなどして計約120万円の金品を受け取ったほか、別の運送会社からも約120万円相当の腕時計を受け取ったとされています。
米田被告は被告人質問において、事件として問われている以外の事業者から接待目的で接触されたことがあるか問われると、「ほかにも数社あったと思う」と回答しました。
日本郵便東京支社の入札汚職事件 不正行為が3代にわたり前々任者も懲戒解雇
日本郵便は7月14日、東京支社の郵便物回収(収集)業務の入札を巡る汚職事件について内部調査結果を発表し、不正行為に関与したとして元社員の2代前の担当者(前々任者)だった50代男性を懲戒解雇処分にしたと発表しました。処分年月日は令和8年7月10日付です。
日本郵便によりますと、この事件では2026年5月に30代の元男性社員が収集業務の入札で便宜を図る見返りに、業者から現金や東京ディズニーリゾートのツアー代金など計240万円相当を受け取ったとして、加重収賄などの容疑で警視庁に逮捕されていました。内部調査の結果、不正行為は元社員の前任者、前々任者の3代にわたり引き継がれていたことが判明したとのことです。
2021年の入札において、前任者は事業者から計40万円相当の接待や金品の供与を受け、複数の事業者に予定価格を漏洩していました。その際、今回処分された2代前の担当者は、契約させたい事業者が最安値で入札したように偽装し、随意契約を交わしていたということです。なお、前任者についても2026年4月に懲戒解雇処分となっています。
日本郵便は今回の調査で、東京支社の2016年度以降の入札205件、他の全国12支社の2021年度以降の370件、さらに入札以外の契約1338件を対象に聞き取りや稟議書の確認を行いましたが、東京支社以外での不正は確認されなかったとしています。
この問題を受けて、日本郵便は同支社と本社の幹部ら14人を戒告などの懲戒処分としました。東京都千代田区で記者会見を行った砂孝治執行役員は「ご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」と謝罪しました。同社は再発防止策として、収集業務を主管する部署以外が入札事務を行うこととし、2027年1月からは当該業務の入札事務を外部へ委託するとしています。
日本郵便東京支社の元主任に有罪判決 収集業務めぐる加重収賄事件で東京地裁立川支部
東京都にある日本郵便株式会社東京支社の元主任で懲戒解雇された米田伸之被告(37)が、郵便物の収集業務の委託をめぐり特定業者に便宜を図る見返りに賄賂を受け取ったとして、日本郵便株式会社法違反(加重収賄など)の罪に問われた裁判の判決公判が7日、東京都にある東京地裁立川支部で開かれました。梅本友美裁判官は懲役2年、執行猶予4年、追徴金124万4000円(求刑:懲役3年、追徴金124万4000円)を言い渡し、賄賂として受け取った約123万円相当の腕時計1本の没収を命じました。
判決によりますと、ポストからの郵便物収集業務の委託契約を担当していた米田被告は2024〜25年、業務の入札で便宜を図る見返りとして、東京都板橋区にある運送会社「ハルキエクスプレス」から千葉県にある東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド)の宿泊代など約114万円〜120万円相当と現金10万円を受領したほか、別の運送会社から腕時計1本を受け取りました。
判決理由で梅本裁判官は、米田被告が実績のある現行業者に委託したいと考え癒着関係を続けたと指摘し、入札で便宜を図ったことについて「職務の公正を軽視する態度は明らかだ」と述べました。一方で、米田被告が反省していることなどを考慮して執行猶予が付けられました。
なお、日本郵便株式会社では不正に関与した前任者および前々任者も懲戒解雇としており、事件発覚後の社内調査では東京支社以外の不正は確認されなかったと結論づけています。


