李琴峰さんの性別暴露を巡る訴訟で東京地裁が甲府市議に110万円の賠償命令

台湾出身で芥川賞作家の李琴峰(りことみ)さんが、SNSでの投稿でトランスジェンダーであることを暴露されプライバシーなどを侵害されたとして、山梨県甲府市議会の村松裕美市議(52)に550万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が29日、東京都にある東京地方裁判所でありました。本村洋平裁判長はプライバシーの違法侵害を認め、村松市議に110万円の支払いを命じました。一方で、今後の投稿に対する差し止め請求は退けました。

訴状や判決などによりますと、法律上の性別を女性に変更した李さんは2013年に来日し、性別変更の事実を周囲に知られないよう注意して生活していました。その後、2021年に「彼岸花が咲く島」で芥川賞を受賞しました。

しかし2024年5月、村松市議がSNS上で李さんについて「身体が男性」などと投稿したほか、性別変更前の本名や高校時代の写真が含まれた第三者の投稿を引用して掲載しました。李さんからの抗議を受けて投稿は一度削除されたものの、村松市議が別の人物のSNSに掲載された写真を改めて投稿したことや、2025年6月の提訴後も投稿を続けたことから、李さん側は将来の発信を禁止する差し止めも求めていました。

訴訟で李さん側は、性別変更の暴露は社会生活を崩壊させる恐れがあり人格権を侵害されたと主張したのに対し、村松市議側は著名な作家である李さんのトランスジェンダーを公表する必要性があったと反論していました。なお、同市議会は3月、「他人の機微な個人情報を本人の同意なしにSNSに投稿した行為は決して許されない」とする議長声明を発表しています。

判決で本村裁判長は、投稿された内容は李さんの身体的特徴や性自認に関わる極めて秘匿性の高い情報であり、公表する合理的な理由はなかったと指摘しました。一方、差し止め請求については、損害賠償責任が認められることで一定の抑止力が期待できるなどとして認めませんでした。

判決後の記者会見で、李さんは安堵を示しつつも喜びの感情はないと語り、カミングアウトの意図がない中でアウティングを受けた恐怖を明かした上で、村松市議に対して自身の非を認めて真摯に反省するよう求めました。李さん側の弁護士によると、アウティングを巡り政治家などの公人に判決で賠償が命じられたのは初めてということです。

村松市議は、性別を公表しない利益が優先されたとの見解を示し、今後も女性の安全を守る活動を継続するとした上で、控訴の有無については弁護士と相談して判断するとしています。

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