慶應義塾大学総合政策学部の佐藤豪竜専任講師らの研究チームは、霞が関の10府省の本府省に勤務する国家公務員を対象に、外来医療費と国会対応業務との関係を調べた研究結果を発表しました。
研究には、横浜市立大学国際商学部の加藤弘陸准教授、京都大学大学院医学研究科の井上浩輔教授と近藤尚己教授、ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ教授らが参加しました。研究論文は、労働衛生分野の国際専門誌「Scandinavian Journal of Work, Environment & Health」に掲載されました。
研究チームは、財務省が実施する医療状況の実態統計調査から、2016年から2023年までのデータを分析しました。対象は、10府省の本府省に所属する18~50歳の被保険者です。医療費を性別や年齢構成の違いを考慮して比較した結果、職員1人当たりの月額外来医療費は、最も低い外務省が2,374円、最も高い厚生労働省が5,125円となり、2倍以上の差がありました。
厚生労働省に次いで医療費が高かったのは、法務省の5,056円、農林水産省の4,637円でした。一方、外務省に次いで低かったのは、財務省の3,016円、経済産業省の3,246円でした。厚生労働省では、特にメンタルヘルスに関係する医療費が目立ったということです。
また、研究チームは、各府省の政策分野を担当する国会の常任委員会について、年間の審議時間を集計しました。これを各府省の本府省に所属する被保険者数で割り、職員1人当たりの業務負担を示す指標として分析しました。
その結果、前年の職員1人当たりの国会審議時間が1%長い府省ほど、翌年4月の外来医療費が0.25%高い傾向がみられました。8年間の累積審議時間は厚生労働省が2,534時間で最も長く、内閣府の1,528時間を1,000時間以上上回りました。
研究チームは、府省によって国会対応業務の量や外来医療費の状況に大きな違いがあると指摘しています。一方、外来医療費は健康状態だけでなく、医療機関への受診のしやすさや受診行動にも左右されるため、医療費が低い府省で健康問題が少ないとは限らないとしています。
研究チームは、今回の分析で示されたのは国会審議時間と外来医療費の相関関係であり、因果関係ではないと説明しています。その上で、業務負担が大きい府省では、勤務状況や健康状態を把握し、適切な産業保健の支援を行うことが重要だとしています。
研究成果は、以下の論文として発表されました。
Sato K., Kato H., Inoue K., Kondo N., Kawachi I. “Parliamentary Workload and Outpatient Medical Costs Among Japanese National Civil Servants: An Ecological Study in Kasumigaseki.” Scandinavian Journal of Work, Environment & Health. 2026;52(6):680–688.


